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おっちゃんタヌキ物語

 


   おっちゃんタヌキ

   とても天気の良い日に洗濯をした。
   雲ひとつない真っ青な空の下に洗濯物を干した。

   すると大きな鷲がすぐ上空を輪を描くように飛んでいた。

   しばらく見入っているとカラスが一羽飛んできて、
   自分よりも遥かに大きな鷲にちょっかいをだしだした。

   カラスがトンビを追いかけるのはたまに見たことがある。

   しかしふたまわり以上も大きな鷲にちょっかいをだすなんて、
   いったいどうなるのだろうと余計に見入ってしまった。

   鷲はカラスのちょっかいを身をかわして避けながらも、
   悠然として輪を描くように飛んでいた。

   カラスのしぶといちょっかいに鷲は段々と高度を上げていった。

   殆ど羽ばたくことをしないで、カラスが突っ込んでくるのをサッとかわしながら、
   ぐんぐんと空高く上昇していった。

   米粒くらいまで小さくなるくらいに上昇したところで、
   カラスは凄い勢いで離れていった。

   ほんの五分くらいのできごとだったと思うけど、
   素晴らしい映画を観終わったような感動が残った。

   動物って凄いと感心して、
   普段の生活の中で、
   そういった場面に遭遇できることが嬉しかった。


  おっちゃんタヌキ物語

   昨年懐いていたタヌコと名づけていた子供タヌキたちは、
   いつしか居なくなってしまった。

   誰かに捕まって毛皮にされたのではないか、
   それとも猟犬に襲われて死んでしまったのではないかと、
   寂しい思いをしたけど、
   どうやら親タヌキが追い出したのではないかと思えるようになってきた。

   タヌコちゃん

   子供タヌキを見かけなくなったあとも、
   おっちゃんタヌキとおかあさんタヌキは、
   ずっと餌ちょうだいと懐いていた。

   春も近づくといつもピトッと寄り添い、
   お互いに毛づくろいをしたりして、
   それはそれは仲睦まじい姿を見せ付けていた。

   タヌキは一度ペアになったら、
   相手が死ぬまでずっと添い遂げるそうだ。

   春を過ぎたあたりから、おかあさんタヌキのお腹が目立ってきた。
   お腹が大きくなるにつれ、おかあさんタヌキは痩せて毛がところどころ抜け、
   みるからにみすぼらしいタヌキに変わっていった。

   そんなおかあさんタヌキに対し、
   餌を譲ったりするような、
   おっちゃんタヌキの気遣いのような仕草を何度も見た。

   顔はおっちゃんみたいだけど、
   なかなか優しいくて可愛いタヌキだと思った。

   しばらくおかあさんタヌキの姿をみかけなくなった。
   その間もおっちゃんタヌキは頻繁に餌をねだりにきていた。
   きっとおかあさんタヌキの分もねだりにきていたのだろう。

   夏も近くなるともっと痩せたおかあさんタヌキも一緒に出てくるようになった。
   お腹がスッキリしていることから、どこかで子供を生んだことがわかった。

   子タヌキたち

   夏も盛りになると、おっちゃんタヌキやおかあさんタヌキの後を、
   子ダヌキがぞろぞろと付いて回る姿が見られるようになった。

   親タヌキたちは近づいてきて手から直接餌を食べたり、
   撫ぜたりできたけど、子ダヌキたちはなかなか近づいてこなかった。

   子ダヌキが少し大きくなったら、やっと近づいてきてくれた。
   たぶん乳離れして、ドッグフードやパンやご飯が食べられるようになったからだと思う。

   子ダヌキの面倒はおっちゃんタヌキの方がみていたように思う。
   おかあさんタヌキはいつも苛々しているのか、
   子ダヌキに対しよく怒っていた。
   時折はおっちゃんタヌキにも噛み付いていた。
   そのあたりは人間の家族のようでもある。

   おかあさんタヌキの餌なんか取りにいこうものなら、
   首のあたりをガブリをやられた子ダヌキが、
   キュイ〜ンと鳴き声をあげていた。

   やせ細ったおかあさんタヌキが、大きくなった子ダヌキたちにお乳をねだられ、
   怒りながらもお乳をやるところを何度も見ると、
   これではおかあさんタヌキもたまったものではないと同情した。

   お母さんタヌキ

   自分の身を削るようにして子育てしているのだから、
   そりゃ怒りっぽくなっても仕方がないと思った。

   それにしても、おっちゃんタヌキは子煩悩である。
   よく子ダヌキの毛づくろいをしてあげているし、
   餌を取られてもじっと我慢していた。

   子ダヌキも大きくなり、親タヌキと餌の争奪戦が始まると、
   おかあさんタヌキは子ダヌキの首をガブリと噛んで、
   キュイ〜ンと泣かしてしまうけど、
   おっちゃんタヌキは餌を身体でブロックして守ろうとしたりして、
   あまり噛んだりはしない。

   それでも子ダヌキたちの旺盛な食欲にかなわず餌を取られてしまうと、
   餌の上に腹ばいになるという荒業とも呼べる技を繰り出し、
   それでは自分も食べれないではないかと突っ込みをいれてしまうこともある。
   まったくお茶目なおっちゃんタヌキである。

   おっちゃんタヌキの荒業

   おっちゃんタヌキを観察していると、
   お茶目でちょっとボケたタヌキだけど、
   何かの気配や犬の鳴き声が聞こえたりすると、
   見通しの良いところへ移動して、
   常に家族のことを案じているような行動をとる。

   特別賢そうでもないし、器用そうでもない、
   口や歯を見る限りでは喧嘩も強そうではない、
   しかし特段に劣っているところもないように思う。
   バランスよく能力を持ち合わせているから、
   野生動物としてあちこちで生きてゆけるのかもしれない。

   餌をあげているときなど、タヌキを触りまくったりするけど、
   おかあさんタヌキや子ダヌキはたまに手に噛み付いてくることがある。
   しかしおっちゃんタヌキだけは絶対に噛み付いてこない。
   いつも餌を貰っている恩義でも感じているのか、
   実に謙虚にして柔和な態度を崩しはしない。

   そんなおっちゃんタヌキのことを密かに尊敬している。
   タヌキは金の精霊だということをどこかで読んだけど、
   そのうちにおっちゃんタヌキが金運をもたらしてくれるのかもしれない。

   タヌキ一家

   おっちゃんタヌキのパワーを信じて宝くじを買ってはみたけど、
   かわりにダニを貰ってしまった。
   わしゃタヌキかと怒ってやった。

   そんなタヌキ一家も、そろそろ親ダヌキたちが、
   子ダヌキに対して厳しくなってきた。
   親離れを促しているのかもしれない。

 

2009年10月28日追記  





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