自然の中へ、そして心の中へ!


セブリ生活のすすめ!

渓流の中のユサバリ

山河でのテント生活の素晴らしさに魅せられたのは、都会での生活を捨て、自然の中での生活を目指し、しばらく渓流でテント生活を経験したことにあります。渓流のせせらぎ、星空の下での焚火、大地に背中を付けて寝ることの心地よさ、それらすべてが新鮮で、細胞の一つ一つがいきいきと活性化してゆくような感覚と、大自然に抱かれるようなやすらぎを覚えることができました。その経験が、サンカに対する興味をより一層深くしていったようにも思います。

富田川上流

二日間違う場所でユサバリを再現して寝てみたのですが、ロケーションが気に入らなかったので少し上流の方へバコシしました。村の一番奥にある民家から、さらに10分ほど上流に遡ったところに良いセブリ場を見付けることができました。セブリ場としての条件は、入り口を南に向かって張れることを一番に考えました。 この辺りへは頻繁にアマゴ釣りに通ったことがあるので、場所を探すのにはあまり苦労せずに見付けだすことができました。

河原


河原を歩いて遡り、膝まで浸かって川を渡ってセブリ場まで荷物を運びました。南に向いた岩があったので、それを背にしてユサバリを張ることにしました。ユサバリとは、丸太(竹)を交叉させた千木に、後方の土手などに突き刺した棟木をかけ、それに天幕をかけるというシンプルなものです。まずしなければならないことはユサバリを張るところを平らにすることです。大きな石もあるので、それを退かすのが結構大変でした。また増水したときのことも考えて水面 よりも一メートルは高いところでないと安心して寝てられません。

 


ユサバリを再現して、まず感心したのは、天幕となるものさえあれば、後は身近なところから調達できるもので設営できるという、とてもよく考えられたテントであるということでした。また、土手や岩に密着させてあることで、どこか岩屋の中に居るような安心感があり、北に土手などを背にしていることから風も防いでくれ、想像していたよりも快適な居住空間を作りだすものだというものでした。今のようなテントの無い時代において、日本の山河で使うテントとしてはもっとも完成されたものだと思いました。

ユサバリを張った河原

自然の中に溶け込むように美しいユサバリ。 ユサバリを張った姿が、山紫水明なこの国の風景に溶け込むように美しくもあり、古代からの神聖なものを継承しているかのようにも感じました。ユサバリの中から見える景色は、それだけで最高の庭園を見ているようでした。山紫水明に恵まれたこの国の素晴らしさを知るためにも、年に何度かは山河へ足を運び入れ、テントを張り、焚火を眺めながら一夜を過ごすのも貴重なひとときとなることだと思います。自然と対話をするということは 自己の魂との対話でもあり、大きな視点を持った答えが返ってくるような気がしました。そして、心身に健全なバランスをもたらしてくれるように思います。みなさん、一緒にセブリませんか!

ユサバリの中でウメガイを使うヤゾー

今回、サンカの人たちのセブリ生活を少しでも再現してみて感じたことは、なによりも豊かな精神性を育むことができたのではないかというものでした。大地に背中を密着させて寝ることで、大地のエネルギーが体を癒してくれるような感覚も久しぶりに味わうことができました。朝日が昇るころに目を覚し、太陽に向かってアーと唱えて手を合したというセブリ生活を真似ることで、現在の私たちが忘れ失ってしまった自然を敬い感謝して生きるという精神が蘇るような思いがしました。そうしたサンカの人たちの生き方や精神性が忘れ去られてしまうのも、何か勿体ない気がして仕方がありません。裸足で大地を歩く心地よさは、それだけで心身を癒してくれるように感じます。自然から多くのものをいただいているということを実感することで、ほんとうに自然を大切にする心が生まれてくるのではないでしょうか。そして、風の音や水の音、小鳥のさえずりや動物たちの息づかい、それら自然の中に存在するすべてのものに耳を傾け、自分が自然の中の一部であることを感じたときに、そこから浮かんできた素直な思いこそが、未来への指針となるものであると強く感じました。







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